
ドアマン
タクシーでホテルの正面玄関に着くと、立派な制服に身を包み、背筋をピンと伸ばしたスタッフがドアを開けて出迎えてくれる。
なんだかすっかり、自分が偉くなったみたい──。
このスタッフをドアマンという。
全スタッフの中で最初にゲストと接する、大事な役目。
ホテルの第一印象はドアマンで決まってしまう。
ホテルゲストの送迎のほか、車の誘導、館内外の案内、タクシーやハイヤーの呼び出し、周辺の警備など範囲は広い。ホテルをよく利用するゲストの顔、名前、会社名や役職、車種、車のナンバーなどをしっかり頭に入れておくことも大切で、その数が多いほど優秀なドアマンということになる。
よくフロントがホテルの最前線と言われるが、物理的にはドアマンのほうが最前線。ホテルの“顔”であり、イメージづくりの大事な部分を背負っているという誇りが持てる。
有名ホテルなら、政界・財界のお偉方や、芸能界のスターと間近で会ったり、言葉を交わしたりできるという“役得”も。
時と場合に応じた素早い判断力をもとめられるのが、ドアマンという仕事の難しいところ。とくに宴会の多い日など、ホテルの玄関は大混雑。いかにスムーズに車を誘導し、ゲストを館内に案内できるかが、腕の見せどころになる。ボヤッと立ってて、ドアを開けるだけの簡単な仕事なんかじゃない。
もうひとつ。ドアマンは決して「外見で人を判断してはならない」という鉄則がある。見かけによる“品定め”は厳禁。どんなゲストに対しても公平に、中立な態度で臨まなければならない。
これは言うはやすしで簡単なことのようだけれど、実はものすごく難しい。その証拠に、ふだんの自分を振り返ってみよう。服装や、顔立ちや、背格好で人を判断してないと、あなたは言い切れる?
ドアマンたるもの、どんなゲストに対しても分け隔てのない応対ができなければ失格。これを徹底的に頭に叩き込むところから、ドアマン修業は始まる。
いわゆる叩き上げで、年季の入ったドアマンは、とても素敵だ。老舗ホテルの名物ドアマンになると、その人柄に引かれてホテルを利用するというケースもよくあるほど。そこまで行ければ、立派!の一言。